ジオイド高と楕円体高の違いをわかりやすく解説
楕円体高とは
楕円体高(Ellipsoidal Height)とは、地球の形状を数学的に近似した回転楕円体の表面から、地表面までの垂直距離です。日本の測量で使用される準拠楕円体はGRS80(Geodetic Reference System 1980)で、赤道半径が約6,378km、扁平率が約1/298.257の回転楕円体として定義されています。
GNSSの衛星測位で直接得られる高さの値が、この楕円体高です。GPS/GNSS受信機は衛星からの信号を使って3次元的な位置(緯度・経度・楕円体高)を算出するため、楕円体高は測定によって自然に得られる値といえます。しかし、この値は日常的に使用される「標高」とは異なります。楕円体は数学的な近似面であり、実際の海面や重力場の形状とは一致しないためです。
日本付近では楕円体面とジオイド面の差(ジオイド高)が約30m〜45m程度あるため、楕円体高をそのまま標高として使用すると大きな誤差が生じます。この差を補正するのがジオイド補正です。
ジオイドとは
ジオイド(Geoid)とは、地球の重力場に基づいて定義される等ポテンシャル面(重力の位置エネルギーが等しい面)のことです。直感的には「静かな海水面を陸地の下にも延長した仮想的な面」と考えることができます。ジオイドは地球の内部の質量分布を反映するため、楕円体のように滑らかな形状ではなく、場所によって凹凸があります。
標高(正標高)はこのジオイド面を基準面として、そこからの垂直距離で定義されます。水準測量で求められる高さがこの標高であり、水はジオイド面に沿って流れるため、土木・建設の分野では標高が実用的に重要です。日本では東京湾の平均海面を標高の基準(ゼロ)としており、これがジオイド面の近似となっています。
標高 = 楕円体高 - ジオイド高
3種類の「高さ」の関係は、以下のシンプルな式で表されます。
H = h - N
- H(標高): ジオイド面からの高さ。水準測量で求める実用的な高さ。
- h(楕円体高): GRS80楕円体面からの高さ。GNSS測位で直接得られる。
- N(ジオイド高): 楕円体面からジオイド面までの距離。ジオイドモデルから求める。
たとえば、ある地点でGNSS測位により楕円体高 h = 76.543m を得たとします。その地点のジオイド高が N = 39.012m であれば、標高は H = 76.543 - 39.012 = 37.531m と計算できます。
この関係を正しく理解しておくことは、GNSS測量の成果を実務で使用するうえで不可欠です。特にドローン測量で得られる3次元データの高さ値が楕円体高なのか標高なのかを常に意識する必要があります。混同すると、数十メートル単位の高さのずれが発生します。
日本のジオイドモデル
日本では国土地理院が高精度なジオイドモデルを整備・公開しています。現在広く使用されているのはGSIGEO2011(日本のジオイド2011)で、日本全国を1分(約1.8km)間隔のグリッドでカバーしています。水準点と重力データを統合して作成されており、陸域でのジオイド高の精度は概ね数cm程度です。
2024年には後継モデルとなるGSIGEO2024が公開されました。GSIGEO2024では、GNSSと水準測量の結合解析手法が改良されるとともに、近年の地殻変動(東北地方太平洋沖地震の影響など)を反映したデータが使用されています。特に東北地方や北海道での精度が向上しており、ドローン測量を含む最新の測量業務ではGSIGEO2024の使用が推奨されます。
ジオイドモデルの選択は成果の高さ精度に直結するため、発注者の仕様書で指定されたモデルを使用してください。仕様の指定がない場合は、最新のGSIGEO2024を使用するのが望ましいでしょう。
ドローン測量での高さ処理
ドローン測量で得られる高さデータを正しく処理するためのフローを整理します。まず、ドローンのGNSS(またはRTK測位)で取得される高さは楕円体高です。この値をそのまま使用すると、一般的な標高とは数十メートルの差が出てしまいます。
標高への変換手順は以下の通りです。第一に、撮影データの処理時にSfMソフトウェアで使用する座標系と高さの基準を正しく設定します。GCP(地上基準点)の高さとして標高を入力する場合、ソフトウェア側でジオイド補正が行われるよう設定が必要です。第二に、GCPを使用しないダイレクトジオリファレンスの場合は、ドローンの楕円体高からジオイドモデルを用いて標高に変換した値を使用します。
RTK対応ドローンの中には、あらかじめジオイドモデルを内蔵して標高を直接出力するものもありますが、内蔵モデルの種類とバージョンを確認することが重要です。国土地理院のジオイドモデルではなくEGM96などのグローバルモデルが使用されている場合、日本国内での精度が不十分になる可能性があります。
最終成果の品質管理として、既知の水準点や検証点で標高値を比較検証し、ジオイド補正が正しく行われているか確認することを推奨します。特にi-Constructionの出来形管理では高さ精度が厳しく求められるため、この検証工程は欠かせません。