DEMデータの種類と使い分け - DEM10B/DEM5A/DEM1Aの違い
DEMとは
DEM(Digital Elevation Model:数値標高モデル)は、地表面の標高を格子状(グリッド状)に数値化したデータです。各格子点に標高値が記録されており、等間隔のグリッドで地形の起伏を表現します。GIS(地理情報システム)や測量の分野で広く利用されており、地形解析、土量計算、洪水シミュレーション、飛行計画など多様な用途に活用されています。
DEMの「解像度」はグリッドの間隔で表されます。例えば「10mメッシュDEM」は10m間隔で標高値が記録されていることを意味します。解像度が高い(間隔が小さい)ほど細かい地形の変化を表現できますが、データ量も増大します。
DSMとDTMの違い
標高モデルには大きく分けてDSM(Digital Surface Model:数値表層モデル)とDTM(Digital Terrain Model:数値地形モデル)の2種類があります。DEMは広義にはこの両方を含む概念ですが、狭義にはDTMと同義で使われることが多いです。
DSMは航空レーザ測量やドローン写真測量で直接取得されるデータで、建物の屋根や樹木の樹冠を含む「見えている面」の標高です。DTMはDSMから建物や植生を除去した「地盤面」の標高で、フィルタリング処理を経て生成されます。土量計算や洪水解析にはDTMが、日照シミュレーションや通信の見通し解析にはDSMが適しています。
国土地理院のDEMデータ
国土地理院は、日本全域のDEMデータを「基盤地図情報」および「地理院タイル」として提供しています。解像度と作成方法の異なる複数のDEMが用意されており、用途に応じて使い分けます。主要なDEMは以下の通りです。
| 名称 | 解像度 | カバー範囲 | 作成方法 | 標高精度 |
|---|---|---|---|---|
| DEM10B | 約10m(0.4秒) | 日本全域 | 等高線から内挿 | ±5m程度 |
| DEM5A | 約5m(0.2秒) | 国土の約80% | 航空レーザ測量 | ±0.3m程度 |
| DEM5B | 約5m(0.2秒) | DEM5Aの未整備地域 | 写真測量 | ±0.7m程度 |
| DEM1A | 約1m(0.04秒) | 一部都市部 | 航空レーザ測量(高密度) | ±0.15m程度 |
解像度と精度の比較
各DEMの特徴を詳しく見ていきましょう。
DEM10Bは、国土地理院の1:25,000地形図の等高線を内挿補間して作成されたDEMです。日本全域をカバーしている唯一のDEMですが、等高線から生成しているため標高精度は±5m程度にとどまります。急傾斜地や等高線の間隔が広い平坦地では精度が特に低下します。大まかな地形の把握や広域の概況把握に適しています。
DEM5Aは、航空レーザ測量で取得された点群データから作成された高精度DEMです。航空レーザ測量は1m²あたり1点以上の密度でレーザパルスを照射し、地表面の標高を直接計測する手法であるため、標高精度は±0.3m程度と非常に高精度です。建物や植生を除去したDTM(地盤面の標高)として提供されています。
DEM5Bは、航空写真の図化測量から作成されたDEMです。DEM5Aが整備されていない地域を補完する目的で提供されており、精度は±0.7m程度です。写真測量による作成のため、植生下の地盤面を正確に捉えにくい場合があります。
DEM1Aは、高密度航空レーザ測量によって作成された1mメッシュの超高精度DEMです。標高精度は±0.15m程度で、微地形の変化まで精密に表現できます。ただし、整備されている範囲は一部の都市部や災害リスクの高い地域に限られています。
地理院タイルでの提供形式
国土地理院のDEMデータは「地理院タイル」としてWeb上で公開されています。地理院タイルはZoomレベル(0〜18)で階層化されたタイル画像・データの配信システムで、DEMデータは標高タイル(DEM PNG形式)として提供されます。
標高タイルはPNG画像の各ピクセルのRGB値に標高情報をエンコードしたもので、以下の式で標高値に変換されます。
※ R=128以上の場合は負の値(海面下)を表す
各DEMデータに対応するタイルの最大ズームレベルは以下の通りです。
| DEM種別 | タイルID | 最大ズームレベル | 1ピクセルの実距離(最大ズーム時) |
|---|---|---|---|
| DEM10B | dem | 14 | 約10m |
| DEM5A | dem5a | 15 | 約5m |
| DEM5B | dem5b | 15 | 約5m |
| DEM1A | dem1a | 18 | 約1m |
Webアプリケーションやプログラムからは、タイルURLのパターンに従ってHTTPリクエストで標高データを取得できます。この仕組みを利用することで、大量のDEMデータを事前にダウンロードすることなく、必要な範囲の標高データをオンデマンドで取得できます。
用途別の使い分け
DEMデータの選択は、用途と要求精度に応じて行います。以下に代表的な用途と推奨DEMをまとめます。
| 用途 | 推奨DEM | 理由 |
|---|---|---|
| ドローン地形追従飛行 | DEM5A(優先)/ DEM10B | 安全な飛行高度設定に十分な精度。広域対応が必要 |
| 土量計算・出来形管理 | ドローン自作DEM(独自) | cm級の精度が必要。国土地理院DEMでは不足 |
| ジオイド補正・標高計算 | DEM5A | 楕円体高から標高への変換精度に直結 |
| 洪水・浸水シミュレーション | DEM1A(あれば)/ DEM5A | 微地形の表現が氾濫域予測の精度に影響 |
| 広域の地形概況把握 | DEM10B | 全国対応。概略の地形把握には十分 |
| 傾斜・斜面解析 | DEM5A | 正確な傾斜角の算出にはレーザ測量精度が必要 |
| GeoTIFFの背景標高 | DEM5A / DEM10B | GIS上のベースマップとして十分な解像度 |
ドローン測量の現場では、撮影前の飛行計画にはDEM5Aを活用し、撮影後のSfM処理で生成した独自のDSM/DTMを成果品として利用する、という使い分けが一般的です。国土地理院のDEMはあくまで「事前情報」として活用し、最終成果には自分で計測した高精度データを使用します。